X-T4で撮影する際、ADV.パートカラーに設定して撮影してみました。
結構面白い効果が得られて写真を撮るのがより一層楽しくなったので、普段と違う写真を撮りたい気分の時におすすめできます。
一色だけ残して編集をかけたい時の補助的な役割としても利用できるように感じました。
- 正面から見て右肩にあるダイヤル
- ダイヤルをADV.に合わせて撮影する
- パートカラーという言葉
- パートカラーフィルターで撮った写真
- パートカラーとカラー写真を比較
- ADV.パートカラーが苦手な被写体
- 小手先のテクニックとしてではなく撮影の補助としての可能性
- まとめ:FUJIFILMは編集の手間から撮影者を解放してくれる
正面から見て右肩にあるダイヤル
右肩のダイヤルはドライブダイヤルといいX-T4のドライブダイヤルには左から順に、
- 長方形を潰したようなマーク:パノラマ
- ADV.:アドバンスドフィルター
- BKT:ブラケティング
→ 複数の設定で連続撮影してくれるモード。
露出を変えて複数枚撮れるので、後からHRD写真を合成することもできます。 - CH:高速連写
- CL:低速連写
- S:1コマ撮影
- HDR:ハイダイナミックレンジ
→ 明るさの異なる写真を3枚撮影して1枚の写真に合成してくれるモード。
白飛びや黒つぶれを避けたい時に使います。
と7種類あります。
いつも写真を撮る時は、S、CHとCLで撮ることが多いです。
フィルムシミュレーションを複数試したい時に、ブラケティング撮影することもありますが、
基本的にはあとから編集するのでブラケティングはあまり使いません。
パノラマやHDRは「使いたいな」と思いつつなかなか使えていないです。
ダイヤルをADV.に合わせて撮影する
次に、アドバンスドフィルターの説明に入ります。
FUJIFILMが用意しているアドバンスドフィルターには、
- トイカメラ
- ミニチュア
- ポップカラー
- ハイキー
- ローキー
- ダイナミットクトーン
- ソフトフォーカス
- パートカラー(レッド、オレンジ、イエロー、グリーン、ブルー、パープル)
の8種類ありパートカラーは各6種類あるため、合計で14種類のアドバンスドフィルターがあります。
個々の詳しい説明は、FUJIFILMのリンクを踏んでいただいて確認してもらうとして、ここでは、パートカラーで撮った写真を紹介していきたいと思います。
パートカラーという言葉
ここでいうパートカラーとは、設定した一色(赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫)の波長のみを残してその他はモノクロにするという機能のことを指します。
Google検索で"part color photography"と検索してもうまくヒットしないので、パートカラーというのは和製英語かFUJIFILM特有の用語かもしれません。
X-T4の設定を英語に変えてみると、パートカラーは"PARTIAL COLOR"に置き換わっていました。
そこで"partial color photography"と検索すると、それらしい写真が表示されます。
"partial color effects"という言い方はあるようです。
他にも、"selective color"と調べると一色あるいは範囲を指定したモノクロベースの写真がヒットするので"photo with partial color efects"や"selective color photography"と言えば、英語圏の方にも伝わるのかな、と思っています。
いよいよ本題の「どんな写真が撮れるのか」というところに移っていきましょう。
パートカラーフィルターで撮った写真
今回使用した機材は、ボディがFUJIFILM X-T4でレンズがXF16-55mmF2.8です。
その他、シャッタースピードやf値、ISOについては各写真に記載しております。
ここに載せた画像は上から、レッド、オレンジ、イエロー、ブルー、パープルと設定して撮ってます。この他にグリーンを設定する機能もありますが、良い被写体が見つからなかったので、今回は省いています。
パートカラー:レッド
パートカラー:オレンジ
パートカラー:イエロー
パートカラー:ブルー
パートカラー:パープル
パートカラーとカラー写真を比較
ADV.で撮った場合でも、RAFファイル(FUJIFILMのRAWデータ)は保存されるため後からRAW現像することが可能です。
これを利用して、撮って出しの状態とパートカラーにした画像とを比較してみます。
並べて比較してみると、なんとなくパートカラーの方が主題に対してインパクトを持たせることができそうですね。
ADV.パートカラーが苦手な被写体
動きの速い被写体 or 影の部分
写真を撮るまでの間に波長を解析しているのか、動きの速い被写体に対しては、パートカラーが効いていません。
もしくは、光が十分に当たっていなくて影になっている場合、うまくパートカラーの機能が発揮されていないことがわかります。
電車の写真だけをみると、動きの速さなのか影の影響なのかは分かりません。
影については、てんとう虫の写真を撮っている時に自分の影が被ってしまうとうまく機能していないことが分かったので、この写真も光の加減によって判定が曖昧になっている可能性があります。
背景に色が少ない被写体
これはある意味で当たり前ですが、被写体の中に色が少ないと、一色だけを際立たせる効果が発揮し難くなります。
コカコーラの看板の写真をみると、看板以外のほとんどは白つぶれしている状態なので、看板が際立って見えることはありません。
ポールの部分や電柱の部分でかろうじてモノクロになっていることが確認できますが、1枚の写真ではほとんど分からないと思います。
ただし、赤色以外は消されているため、看板の赤が少し目立って鮮明に写っているようにも見えます。
小手先のテクニックとしてではなく撮影の補助としての可能性
ADV.パートカラーで撮影すると、特定の色が際立って表現されるため、視覚的にかなり高い効果が得られるように感じられました。
自分としてもPC上での編集なしでパートカラーで写真を撮れるのが楽しく色々撮ってしまっているのが現状です。
しかし、狙った波形の光を抽出するので主題以外の部分も色が残ってしまう場合があります。
今回の作例でいうと、以下のてんとう虫の写真が「てんとう虫のオレンジ色だけを残したいのに、背景の植物も部分的にオレンジ色になっている」状態になっています。
てんとう虫は目を惹いているので、手軽に撮れる写真としては成功かもしれませんが、本来であれば、画像編集ソフトを使っててんとう虫の部分だけを選択して、その他をモノクロに変換するべきです。以下、GIMPでてんとう虫の部分を選択しHue-Saturationで背景をモノクロに、逆にてんとう虫の色は引き上げる処理をしています(詳しい使い方は今回は省きました)。
一概にどの写真がいいかを推し量るのは難しいですが、主題の色を際立たせたい場合、背景色に色が残ってしまうのはノイズのように感じられるので「画像編集ソフトで範囲指定して編集する方が良さそうだ」と個人的には考えています。
ただ、このように編集するには、カメラ以外の機材を使って時間を取る必要がありますし、被写体と向き合っている時間に成果物がイメージできないのはすこし残念です。
そう考えると、FUJIFILMの「パートカラーで撮れる」という機能は、編集後のイメージがしやすく、撮影時に構図を考える上で非常に良い手助けになると考えられます。うまく撮れれば編集も必要なくなるので、時間短縮にもなります。
まとめ:FUJIFILMは編集の手間から撮影者を解放してくれる
2019年のテレ東プラスのインタビューで富士フイルムの上野 隆さんは、
『…RAW現像などのデジタルでの画像処理は本来は写真家ではなくラボマンの仕事であり、別のスキルなんです。それなのに、写真家が自分で現像しないとまともな色にならないカメラというのは、ダメなのではないかと思っています…』
と語っており、アドバンスドフィルターも使い方によっては、撮ったその場で狙った編集効果を付与することができ、撮影者を編集の手間から解放してくれるツールとして非常に強力なものになりうるのではないか、と感じました。
また、RAWファイルが残ることから「小手先の視覚効果に頼った撮影」というよりも「狙った視覚効果を意識しながら撮影に望むことで、後の編集を見越した撮影」が可能になり、補助的な役割も持ち合わせているようにみえます。
フィルムシミュレーションに代表されるFUJIFILMの画像効果に共通して言えることですが、PCやタブレットを使って編集する時間を短縮したり、撮影時に編集した後の成果物をイメージしやすいようなツールになっているのではないでしょうか。